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FM浦和 森谷明仙 こころの日めくり

 

書へのオマージュ 森谷明仙ひとりごと
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           2025年9月1日 書の風景 こころの風景(31)

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             ことしも8月がやってきた。
             原爆と終戦。80年目の夏。
             8月6日 8時15分。
             誰もがほんとうの平和を願った。
             
            語り尽くせない
            例えようもない苦しみと悲しみを抱えたまま
            きょうこの日まで生き抜いてきた人たち。

            メディアは競うように特別番組を組み
            「ヒロシマ ナガサキ」を伝えていた。
            日本中の 世界中の誰もが心の底から
            戦いのない平和な社会を願った。
            まっすぐで真摯な子どもたちの訴えと決意は
            感動を持って世界中にこだましていく。
            直後 ブラウン管は
            無表情の政治家たちをクローズアップした。
            この人たちは 今 この瞬間
            一体何を思い 何を考え
            何のためにそこに座っているのだろうか。

            遠い日の夏の空はどこまでも高く青かった。
            まだ小学生だった時
            夏になるとマラリアの後遺症に苦しむ
            父の姿を目の当たりにして
            その苦しみようは本当に怖くて
            遂に外に飛び出してしまっていた。 
            その時
            すがるように庭の路地から見上げた空は
            吸い込まれていくかと思う程に高くて真っ青で
            思わずその空に向かって幼い不戦の決意をしていた。
            あの時から長い年月を刻んできたが
            布団が飛ぶ程の父の苦しみようと空の色は
            今なお鮮明に脳裏に焼きついていて離れない。

             父が残してくれた書の道 筆の跡を追う。
             いのちの限り
             幸い願う一筆でありたいと思っている。
                          森谷 明仙
                          (「SAITAMAねっとわーく」
                            2025年9月1日号より)


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