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FM浦和 森谷明仙 こころの日めくり

 

書へのオマージュ 森谷明仙ひとりごと
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            2025年3月15日
              2022年10月号から「SAITAMAねっとわーく」に掲載された
               「書の風景 こころの風景」を順番にお届けしています。

              書の風景 こころの風景(16) 「舞」

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             冬陽に誘われて自転車を走らせていたら
             急に冷たい風がひんやりと頬をさすった。

             見上げれば真っ青な空。
             自転車を止めて
             高く澄み渡っている空を見上げた。

             身体まで吸い込まれてしまいそうな
             浮きあがって行ってしまいそうな
             雲ひとつない空。

             ああ この同じ空の下で
             戦場の子どもたちは今も恐怖におののき
             震え傷ついているのだろうかと思ったとたん
             勝手に涙が込み上げてきた。

             「希望」とか「夢」とか「ひかり」とか
             生活の中に当然のようにあったそれらが
             容赦なく奪われていく。
             まるで「戦前」の一場面が
             タイムスリップしたかのような毎日の報道に
             悲しみと憤りしか表せない自分がもどかしい。

             新しきにむけて準備していた
             新しい筆をおろし
             1000枚の半紙の束を紐といた。
             墨は和墨と唐墨と
             そこにわずかな青墨をすり込んでみた。
             青墨は青い空への願いだ。

             古代文字で「舞」。
             両手をいっぱいに拡げて
             あしたを信じて精一杯に舞いたいと思う。


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                         森谷 明仙
                          「SAITAMAねっとわーく」
                            2024年1月号より


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