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FM浦和 森谷明仙 こころの日めくり

 

書へのオマージュ 森谷明仙ひとりごと
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           2025年3月1日 書の風景 こころの風景 (28)


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            70代半ばにして
            知恵熱でも出したのかと思ってしまった。
            「ねっとわーく」476号の企画を見て
            本棚の奥にあった「宮沢賢治童話集」を
            久しぶりにめくった。
            「銀河鉄道の夜」などの代表作が収められていて
            巻末には、私が出版社退職後も
            遠くから見守って下さっていた上司で
            児童文学者の熱い解説がしるされている。
            噛み締めるように読み返して
            私はいったい今まで
            何を学んできたのかと思ってしまった。
            せかされるように 教育者の三上満さんから頂いていた
            「宮沢賢治 修羅への旅」を開いた。
            扉には先生のサインと並んで
            「人びとのほんとうの幸いもとめて 森谷明仙さんへ 1997.11.2」
            とあった。
            ひたすら文字を追えば
            慈しみときびしさの世界。
            それは永遠。
            ああ やっぱり 知恵熱か。

            いままで 数え切れない程に
            一本の線と向きあってきたけれど
            その線の中にどれ程のいのちの墨滴を
            落とすことができていたのだろうかと
            自問自答する。

            ああ 愛しきものたち。
            空想の中で「桔梗いろの空」がささやいた。
            40代後半に書いていた
            一枚の書が 急に愛おしくなった。

              「ひとはみな
               やさしさのなかで
               生きているのに
               苦しくなると
               そのやさしさを
               みうしないそうになるね」

            額装したまま 長い間、押し入れの奥にあったが、
            今は 仕事場で私と一緒にいる。

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                           森谷 明仙
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                             2025年3月1日号より)

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