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FM浦和 森谷明仙 こころの日めくり

 

書へのオマージュ 森谷明仙ひとりごと
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           2024年12月15日
            2022年10月号から「SAITAMAねっとわーく」に掲載された
             「書の風景 こころの風景」を順番にお届けしています。

            書の風景 こころの風景(12) 「一途に」 2023年9月号

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            「ありよう」を整えたくなった時
            筆の力を借りたくなる。
            墨と一緒に半紙と語りたくなる。
            その繰り返しのなかで
            不確かだった自分の意志が
            少しずつ固まっていく。

            筆は静かに動き出し
            やがて私を新しい世界に導きはじめてくれ
            半紙の上に新しい風景が写りはじめる。
            身体の中の芯の部分に
            やっと触れることができたような気がして
            身体がほてってくる。
            それは私が「わたし」にたどり着いたとき。
            不器用だけれどやっぱり一途に生きたいと思う。

            今年ももうすぐ1年で一番美しいと言われる
            「中秋の名月」が夜空にあらわれる。
            平安の時代から満月の夜には
            豊作を願い 感謝し
            美しい月を愛でたという。
            農家に育った私は
            秋まつりに華やぐ父と母
            村の人たちの笑顔が何よりも好きだった。
            そして嬉しかった。

            いつの頃からか、満月の50分後から
            次の満月に向かってかけはじめるという
            「十六夜(いざよい)」の月に
            こころひかれるようになった。
            12カ月の「月の満ち欠け」は
            人としての歩みとも重なるのか。
            今年も 十五夜 十六夜の月を見上げて
            「一途にこころ丈夫であれ」と誓いたい。

            芭蕉は
            ふるさと信州 冠着山(通称・姨捨山)で
            「十六夜もまた更科の郡(こおり)かな」と詠んだ。
            美しい山合いの峰で
            込められた新しきの気配を詠まれたのだろうか。
            その棚田は今頃 黄金色の稲穂に染まっていることだろう。

            自然の持つ力は偉大だ。
            ふと自然こそが「一途なのだ」と思った。
                               森谷 明仙
                               (「SAITAMAねっとわーく」
                                   2023年9月号より)

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