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FM浦和 森谷明仙 こころの日めくり

 

書へのオマージュ 森谷明仙ひとりごと
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            2024年10月15日
              2022年10月号から「SAITAMAねっとわーく」に掲載された
                「書の風景 こころの風景」を順番にお届けしています。

             書の風景 こころの風景(10) 「花紅柳緑」 2023年7月号より

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            新しい生活を始める時
            経済学者の故宮川實先生から
            「花紅 柳緑」の直筆の色紙を頂いた。
            まだ20代だった私は
            そのことばの意味の半分も理解できないまま
            若さとエネルギーにまかせて
            走ってきたように振り返っている。
            いくつかの山を越え、川を渡り
            石ころだらけの道を歩き
            いままた目の前の山々を仰いでいる。

            そんな時はきまって、このことばを思い浮かべ
            このことばに込められた意味を考える。
            それぞれの立場で、それぞれの方法で
            「花は更に紅に」「柳はより緑であれ」。
            自然体であれと・・・。何と難しいことか。

            もっと深い意味があるような気がして、筆をとる。
            半紙の上に現われる線質や形は
            私の心の変化と一緒に迷いながら
            その都度変わっていく。

            そしてようやくそれは支え合いだと気づく。
            「花」は緑の中にあってこそ、生きいきと咲き
            「柳」もまたそこに舞う花があってこそ
            すがすがしいのだと。
            我流の解釈かもしれないけれど。

            梅雨の時期、野に咲く「ほたるぶくろ」を想った。
            どんなに工夫しても花びんの中では
            あの可憐な美しさには及ばない。
            山里の「ほたるぶくろ」が
            凛として愛おしいほどに見えるのは
            あの草むらの土の上だからこそだろう。

            「花紅 柳緑」のなかに含まれる意味は
            限りないように思える。
                          森谷 明仙
                            (「SAITAMAねっとわーく」2023年7月号より)

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