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2024年5月1日 書の風景こころの風景(20) 「豊」 古代文字で「豊」。 「光」「恵」との三連作の中の一作。 13年前の東日本大震災の直後に仕上げたもの。 埼玉でも毎日、計画停電が繰り返されて 大きなガチャンという音と同時に 暗闇と寒さにおそわれた。 その時、私は 個展と、対談と表現の仕事の準備中だったが とても筆など持てる状況ではなかった。 日に日に、恐怖と不安が掛け算していた。 そんな時、見上げた夜空に 闇夜を照らす月の姿があった。 穏やかだけどつややかで 暖かくて強い光と思った。 突き動かされるように 「この月の明かりで書かせてもらおう」と思った。 書の原点の古代文字で。 急いで2階の窓際に墨と筆を運んだ。 月は想像以上に明るかった。 机の上にちゃんとやさしい“ひかり”が届いた。 墨の中にねがいや意志や希望を摺り込んで 共にあることを筆に伝えたかった。 私ができる精一杯のチカラだった。 その時の三連作には、いまも尚、思いが強くて その後の私の書道生活を支え続けてくれている。 先が見えずに苦痛の中で暮らされている 能登半島の皆さんの苦悩を思えば 自分の無力さを思い知らされて 愕然とするのだけれど 私には書き表していくしかないと思ってしまう。 森谷 明仙 (「SAITAMAねっとわーく」2024年5月号より) |
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