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FM浦和 森谷明仙 こころの日めくり

 

書へのオマージュ 森谷明仙ひとりごと
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2月25日 王羲之 特別展を観に行ってきました(その1) 


                 東京に 雪が降った日
                 「王羲之」特別展を観に行ってきた

                 上野公園を通り過ぎて
                 降りしきる 冷たい雪のなかを
                 東京国立博物館 平成館に向かう
 
                 初めて王羲之の書を知り
                 夜を徹して書き続けた書道学校の頃が 思い出されて
                 入り口に立った時は もう
                 身体のなかは 緊張し熱くなっていた

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                                             王羲之特別展のチケット・案内

                 29通の書簡が収められている「十七日」から始まる『十七帖』が
                 静かに 王羲之の世界へと 誘ってくれる

                     「去る十七日 あなたからの手紙の返事を
                      届けていただこうと思っていましたが・・・
                      それより先に
                      またお手紙をいただいてしまいました・・・」

                 丁寧に 静かに始まる筆の動きと
                 その線の ふくらみのなかに
                 やわらかさと 温かさと 平らさを感じてしまう

                 相手のことを思う 気配りと
                 少し気弱な 自分のことも 書き添えて
                 王羲之の手紙の文面からは 
                 武将でありながらも
                 やさしく 慈しみ深い 人柄が伝わってくる
                 気がつけば
                 その筆跡から
                 王羲之の姿を追っている

                 『姨母帖』という 王羲之20代の頃の作品がある
                 叔母の不幸を悲しんで書いた書簡で 
                 「若書きの書」として知られている

                 『姨母帖』は 私が特に好きな作品
                 ほっとさせてくれるような 
                 てらいのない 穏やかな線のふくらみ
                 線と線の間に
                 文字と文字との間に
                 ふところがあるようで
                 そっと
                 忍び込ませてくれそうな・・・
                 そんな思いにさせてくれる

                 いつまで観ていても飽きない
                 どんどん 好きになっていく

                 外の雪も 周りの人々の気配もみんな消えて
                 王羲之の世界に 入り込んでいく

                 そうして
                 王羲之や智永や欧陽詢や 
                 書の歴史をつくってきた
                 書家たちとの 初めての出会いに
                 心震わせた
                 まだ若かったころと
                 同じ血潮が
                 身体のなかに よみがえってきたようで
                 熱くなっていく

                                           森谷 明仙
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